注目の作家
大村 幸太郎
- おおよその価格帯
- ¥500,000 - 1,000,000
3人の師匠から受け継いだ友禅の技
第70回日本伝統工芸展で文部科学大臣賞を受賞した友禅作家・大村幸太郎。美術大学卒業後に、友禅作家の木原明、吉田喜八郎、そして父・大村禎一という3人の師匠のもとで、糸目友禅や、雪が舞い降りたように仕上げる蝋吹雪染(ろうふぶきぞめ)という伝統技法を学び、2013年からは京都の工房を継いで制作を続けています。写生をヒントに作品制作をするという大村。魚や鳥などの動物、植物や風景などをモダンなデザインに落とし込んだ作品が魅力です。
大木 淑恵
動きのあるデザインと独自技法の調和
日本を代表する竹工作家が集う伝統工芸木竹展で最高賞の文部科学大臣賞をはじめ数々の受賞を誇る大木淑恵。彼女は今日の竹工芸の基盤を形成したともいわれる、人間国宝・飯塚小玕齋(いいづかしょうかんさい)の最後の弟子として指導を受け、研鑽を重ねました。現在は、斜めに曲げたヒゴを連ねて稜線を表現する、稜折(たかおり)という独自技法を用いて、端正なたたずまいの中に動きのあるデザインの作品を生み出しています。大木の作品は、オーストラリア最古の美術館であるビクトリア国立美術館など有名美術館にも収蔵され、国内外から高い評価を得ています。
原 智
- おおよその価格帯
- ¥300,000 - 900,000
金属の美しさを伝統技法と独自表現で昇華
一枚の金属の板をたたいて造形する鍛金に、魚々子象嵌(ななこぞうがん)という独自技法を取り入れ作品を制作する金工作家、原智。一見すると器の表面だけに色付けされたように見える線や点には、ボディとは違う種類の金属を嵌め込む象嵌という高度な技術が使われています。原はその象嵌に古くから伝わる魚々子という連続した円を刻む彫金の技法を融合させ、他に類をみない表現技法を生み出しました。一寸の狂いも許されない精緻なデザインが施された作品は、人間国宝から気鋭の若手作家までが集う伝統工芸日本金工展で数々の受賞を誇り、海外の美術館にも収蔵されています。
井上 楊彩
内なる想いを作品に託す
「楚々として美しく、可愛らしく、ずーっと傍に置いてもらえるような作品を作りたい。」と語るのは人形作家・井上楊彩(ようさい)。国内最高レベルの作品が集う日本伝統工芸展での日本工芸会会長賞をはじめ、数々の受賞歴を誇ります。楊彩は人間国宝・秋山信子の漆で仕上げる人形作品について学んだことをきっかけに、自らも漆芸を学び始めました。近年では漆を使った仕上げにも挑み、落ち着いた輝きを放つ作品を制作しています。漆は耐久性にも優れ、古来より多くの美術品に使われてきました。末永く変わらぬ姿で残ってくれるように、楊彩の作品にはそんな思いが込められています。
粟根 仁志
研鑽された技術で拓く七宝の未来
澄んだ青の色彩を特徴とする七宝作家、粟根仁志。七宝は、土台となる素地の上にリボン状の銀線で模様を描き、釉薬を重ねて焼成を繰り返すことで奥行きのある色彩を生み出す技法です。完成までの各工程で、非常に緻密で繊細な技術が求められます。粟根は、自ら設計・加工を行うという素地の立体的な造形表現を得意とし、七宝の新たな表現の可能性を探求してきました。伝統の枠を超え芸術に昇華された作品の数々は、工芸分野における国内最高峰の展覧会で受賞を重ね、国内外を問わず高い評価と注目を集めています。
井上 萬二
- おおよその価格帯
- ¥150,000 - 3,000,000
卓越した技で白磁の造形美を極める
佐賀県有田に自身の名を冠した工房を構え、現役で作陶に向き合う陶芸家・井上萬二。巧みなろくろ技術によって生み出される端正な造形の作品が特徴です。海外での技術指導や多数の展覧会を経験し、1995年には「白磁」の人間国宝に認定。芸術分野における優れた功績を称えられ、紫綬褒章も受章しています。時代に即した感性を持つ井上の作品は国内外の多くの人々から愛されています。程よく緊張感のあるフォルムでありながら親しみを感じさせる独特の雰囲気で、見る人、使う人を楽しませてくれます。
石原 雅員
- おおよその価格帯
- ¥10,000 - 10,000,000
高い伝統技術と現代的なデザインで切り開く、漆芸の新たな境地
石原雅員は、讃岐漆芸を代表する人間国宝である音丸耕堂のもとで学び、2011年には香川県無形文化財彫漆技術指定を受けました。何層にも塗り重ねた漆を彫り紋様を浮き立たせる彫漆や、色漆の層になった板(堆漆板)を象嵌する堆漆象嵌といった技法を得意としています。日本を代表する工芸作家の最新作が集う日本伝統工芸展や日本伝統漆芸展においても数々の受賞歴を誇ります。現在は「伝統工芸の高い技術を使いながら現代生活の中で美しく機能する作品造り」というスタイルを確立し、今までにない斬新な漆工芸に挑戦しています。
前田 正博
- おおよその価格帯
- ¥50,000 - 800,000
見るものを楽しませ、明るくさせるやきもの
2022年に作陶50年を迎えた陶芸家、前田正博。東京藝術大学大学院を修了後、国内外で展覧会に出品。2009年には日本伝統工芸展で最高賞の日本工芸会総裁賞を受賞し確固たる地位を確立しました。作品は国内の美術館のみならず、フィラデルフィア美術館やブルックリン美術館など海外の有名美術館にも収蔵されています。極細のマスキングテープを貼り、彩色しては焼く、という工程を繰り返す独自技法で生み出される格子模様は今や前田の代名詞となっています。「工芸の基本は明るく、楽しく、美しく」と語る通り、大小さまざまで色とりどりの作品は、見る者そして使う者たちを楽しませてくれます。
村上 良子
植物染料の美しい色彩と大胆なデザイン構成で魅せる紬織の世界
真綿から紡がれた紬糸で着物を作る紬織作家、村上良子。自然の心象風景をモチーフにした作品が特徴で、透明感のある草木染の色彩と斬新な色面構成によるデザイン性の高さが人気を集めています。村上は、紬織の人間国宝・志村ふくみに師事し、植物染料と織りの技術を習得。伝統を受け継ぎながらも常に新しい表現を探求しています。2015年には国内最大規模の工芸の展覧会である日本伝統工芸展で、日本工芸会保持者賞を受賞。翌年に紬織の分野で人間国宝に認定されました。現在は後継者の指導にも尽力し、紬織の世界を牽引する作家として活躍しています。
十四代 今泉 今右衛門
- おおよその価格帯
- ¥50,000 - 5,000,000
歴史に培われた技術を現代に
今泉今右衛門は江戸時代から続く色鍋島今泉今右衛門家の十四代目。陶芸分野史上最年少で「色絵磁器」の人間国宝に認定されました。国内最高レベルの作品が集う日本伝統工芸展でも数々の受賞を誇り、作品は大英博物館をはじめ国内外の有名博物館、美術館に収蔵されています。 歴代の今右衛門が培ってきた伝統技術を継承しながらも、「現代の色鍋島をいかに創出できるか」をテーマに、プラチナを使った上絵など独自の技法にも挑戦を続けています。
石田 知史
- おおよその価格帯
- ¥1,000,000 - 2,500,000
繊細さが際立つガラスの美、パート・ド・ヴェール
古代メソポタミア時代に起源を持つガラス技法「パート・ド・ヴェール」。ガラス作家石田知史は、京都の地でその技法を研究し、「鋳込みガラス」という工芸の一ジャンルにまで発展させた石田亘、征希のもとで育ちました。自身もガラス工芸について学びながら、アジアや中東、アメリカなど諸外国をめぐり独自の表現を追求。2006年には国内最高レベルの作品が集う日本伝統工芸展で最高賞(日本工芸会総裁賞)を受賞しました。大胆なフォルムと異国情緒漂う繊細な文様が施された作品は石田の真骨頂です。
佐故 龍平
- おおよその価格帯
- ¥400,000 - 3,500,000
独自の手法で唯一無二の存在感を放つ
何層にも重なった金属を叩きのばすことで生み出される、木目のような模様が特徴の杢目金(もくめがね)。その技法を得意とする佐故龍平の作品は、独特の模様から醸し出される個性と金属の凛とした空気感を併せ持ち、幻想的な世界観を表現しています。人間国宝から気鋭の若手作家までが集う日本伝統工芸展において、2003年に東京都知事賞を獲得。その後も数多くの展覧会での受賞を重ねます。海外の美術館にも所蔵されるなど、国内外から高い評価と人気を集めている作家のひとりです。
山岸 一男
- おおよその価格帯
- ¥3,000,000 - 5,000,000
磨き上げられた沈金の技術で漆の魅力を広げる
漆器の代表的な産地である輪島で作品制作に取り組む山岸一男。漆を刃物で彫った溝に金粉をすりこむ「沈金」の技法で人間国宝に認定されています。肉眼では捉えきれないほど細かく繊細な文様や作品を印象づける線は、すべて緻密な手作業によるものです。その磨き上げられた技術と芸術的な表現が高く評価され、国内最高峰の工芸作家が集う日本伝統工芸展で2005年に高松宮記念賞を受賞。伊勢神宮式年遷宮の御神宝も手がけています。輪島の自然をモチーフとして、豊かな感性によって生み出された作品は、世代を問わず多くの人々を魅了しています。
藪内 江美
香川漆芸の伝統技法が光る色漆と彫りの交錯
200年近い歴史を持つ香川の漆芸は多くの人間国宝を輩出してきました。その香川特有の伝統技法に魅せられ、香川の地で制作に励む漆芸作家藪内江美。藪内は、線や点で彫った溝に色漆を塗り込んで模様を表現する蒟醤(きんま)という技法で高い評価を獲得。2009年日本伝統漆芸展での新人賞を皮切りに、日本を代表する漆芸作家が集う数々の展覧会で受賞を重ねています。自身が目にした自然の風景を表現しているという作品は、色漆の色彩が独特の世界観を生み出し、見る者の目にも鮮やかに映ります。
小宮 康正
- おおよその価格帯
- ¥300,000 - 1,100,000
色褪せない着物は世代を超える一枚に
小宮康正は国内最高レベルの作品が集う日本伝統工芸展で 1983年に文部大臣賞、 2006年には高松宮記念賞を受賞。 2018年に江戸小紋の分野で人間国宝に認定されました。小宮家は康正の祖父から三代続けて人間国宝に認定されている名家。代々伝わる江戸小紋の技を継承し続けながらも、移りゆく時代に合わせて改良を重ね、作品を発表しています。「何年たっても輝きを失わない、冴えのある色を目標としている」と語る小宮。小宮が染めた着物は親から子へと受け継がれる一枚として愛されています。
中田 博士
真珠の輝きが美を醸し出す磁器
洗練されたフォルムと真珠の輝きを持つ作品で評価の高い陶芸家中田博士。中田は九谷焼の粘土を使 いながらも九谷特有の色絵は用いずに、マットな輝きを放つパール釉 で細く繊細なストライプ模様を施した「真珠光彩」という独自技法を確立させ活躍。作品は素地が持つ白磁色と釉薬との質感の異なる白で彩られ、見る角度によって上品なきらめきを放ちます。2020年には日本伝統工芸展で東京都知事賞を受賞。国内外からの注目を集めている陶芸家のひとりです。
中川 衛
- おおよその価格帯
- ¥300,000 - 8,000,000
加賀象嵌の新たな表現を常に追求
中川衛は、石川県金沢の金工作家である高橋介州の作品に魅了され加賀象嵌(かがぞうがん)の道へ。失われつつあった技術の伝承にとどまらず、現代的な感覚を取り入れたデザインで伝統に新たな息吹をもたらしました。2004年には彫金の分野で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。メトロポリタン美術館や大英博物館への作品所蔵、各国での実演・講演などグローバルに活躍し、象嵌の技法や魅力を新たな世代に伝えています。
松本 三千子
透き通るような色彩と繊細な技で表現
透明なガラス質の中にキラキラと輝く銀線が特徴の省胎七宝。その第一線で活躍する松本三千子は、現代の工芸作家の作品が集結する日本伝統工芸展において2016年に高松宮記念賞を受賞。国内外からますますの注目を集めています。彼女の作品は、省胎七宝の特徴を生かした清涼感のある色彩と、抽象的かつシンプルな模様の組み合わせが魅力的。繊細な技で生み出された世界に心を奪われます。
浅井 康宏
- おおよその価格帯
- ¥1,600,000 - 10,000,000
精緻を極めた蒔絵の技
日本独自に発達した漆芸の代表的な技法、蒔絵。その蒔絵でいま最も注目される作家のひとり、浅井康宏。大学卒業後、蒔絵の人間国宝である室瀬和美に師事。光の具象化をテーマにした蒔絵玳瑁(たいまい)宝石箱「光の道」は、2012年日本伝統工芸展で日本工芸会新人賞を受賞し、大きな注目を集めました。現在は、出身地の鳥取で育てた貴重な国産の漆を使いながら作品を制作。精緻を極めた作品は国内外で多くのファンを魅了しています。
松本 破風
- おおよその価格帯
- ¥900,000 - 5,000,000
竹の特性を活かした造形美を追求
2019年、スペインのファッションブランド「ロエベ」とのコラボレーション作品を発表し、注目を集めた竹工作家の松本破風。人間国宝である飯塚小玕齋に師事し、竹という素材を尊重しながら、竹ならではの造形美を追求しています。細かな網代編みの作品から、のした竹を大胆にデザインした作品までその制作の幅は広く、日本工芸会会長賞をはじめ数多くの受賞を誇ります。現在は南房総の地に工房を構え、竹と向き合いながら制作を続けています。
中村 弘峰
物語の一瞬を作品に込める
野球選手などをモチーフにしたアスリートのシリーズが人気を博している人形師 中村弘峰ですが、その基礎は伝統ある博多人形の技にあります。4代続く人形師の家に生まれ育ち、父である中村信喬に師事。多彩で優れた工芸技術が受け継がれる九州地域を対象とした西部伝統工芸展で数多くの受賞歴を誇るほか、日本伝統工芸展では2013年の新人賞受賞を皮切りに数々の作品が入選しています。一瞬の動きや表情を捉えた作品は、その背景に、作品の持つストーリーが見えてくるかのように感じられます。
江里 朋子
仏教美術から生まれた華麗な技
截金(きりかね)は主に仏像や仏画などを美しく飾るための技法で、6世紀ごろに仏教の伝来とともに大陸から日本へ伝えられました。江里朋子は自身も仏像の装飾に携わる一方で、その千年以上変わらぬ截金の技法を現代の工芸作品に表現。緻密で繊細な作品は、2011年の日本伝統工芸展新人賞をはじめ、各種工芸展に入選するなど高い評価を得ています。現在は、人間国宝でもあった母、江里佐代子の遺志を継ぎ、長年受け継がれてきた截金をいかに現代に昇華するかに挑んでいます。
渡邊 明
- おおよその価格帯
- ¥40,000 - 3,900,000
光の美しさを独創的な技法で表現
デザイン性の高い作品で数多くの賞を獲得し、2008年には芸術分野功労者に贈られる紫綬褒章も受賞したガラス作家 渡邊明。 京都大学を卒業後にオーストリアでガラス工芸を学び、ガラスを何層にも重ねた「積層(せきそう)」という独自の技法を生み出しました。重ねられたガラスの間には金粉や色ガラスの粉が輝き、伝統ある切子の技法でカットされたガラスに美しい光のプリズムが生まれ、見る人々を魅了しています。
隠﨑 隆一
土と火が織りなす独創的な作品
日本六古窯のひとつで、800年の歴史を持つ備前焼。陶芸家 隠﨑隆一はこの地に他県から移り住み、長い伝統をさらに発展させるべく作陶を続けています。「土との関わりを大事にしたい」と本人が述べる通り、隠﨑の作品は土の風合いと、炎が生み出した焼き色が魅力。作品の造形は斬新で、海外の有名美術館での展覧会へも多くの作品が招待出品されています。第69回日本伝統工芸展(2022年)では文部科学大臣賞を受賞。備前を代表する陶芸家のひとりとして活躍しています。
新庄 貞嗣
茶碗の形に独自の技を昇華
茶の湯で使うための陶器“茶陶”として人気を博してきた萩焼。新庄貞嗣は、萩焼草創期の17世紀初めに開窯した「新庄助右衛門窯」の十四代目に当たります。手になじむ碗形(わんなり)の茶碗は、茶人だけでなく陶芸愛好家や研究者から絶大な評価を獲得。海外展覧会への出品も多数あり、作品はイギリスの大英博物館にも収蔵されています。
鈴木 徹
- おおよその価格帯
- ¥200,000 - 1,200,000
緑釉が創り上げる独特な世界観
「亜流とならない、いままでになかったもの。それでいて力強く、存在感のある作品を作り上げようと心がけています」その言葉の通り、陶芸作家鈴木徹の作品は織部焼に端を発しながらも、伝統の踏襲だけにはとどまりません。多角形に面をつけた造形や鮮やかな緑釉が鈴木の世界観を生み出し、国内最高レベルの作品が集う日本陶芸展では数々の受賞歴を誇ります。現在は三種類の釉薬を使って美しいグラデーションを見せる三彩にも取り組み、さらなる高みへと挑戦を続けています。
小椋 範彦
- おおよその価格帯
- ¥2,500,000 - 4,000,000
漆芸の枠を超えゆく技術に魅せられて
草花、風景等のモチーフを得意とする漆芸作家、小椋範彦。漆芸の技法を卓越した技術で細かに使い分け、国内はもとより海外の展覧会にも多数出品し、高評を得ています。近年は、これまでにない絵画的な表現の研究を推し進め、漆芸技術を用いて油彩や水彩画のように風景を描く「蒔絵パネル」にも挑戦。独自の手法を生み出すに至りました。世界で最も注目を集めている漆芸家のひとりとして、1200年続く漆芸文化を後世へとつないでいます。
髙橋 寬
友禅染の伝統を現代のデザインに
日本を代表する染物のひとつ、友禅染。高橋寬は10代のころより染めの道に入り、友禅の人間国宝・中村勝馬のもとで学びました。「糊を置いて染め、また糊を置いて染める。単純な技法の中で洗練していく」。そう語る高橋の言葉通り、作品に表現される文様は、幾何学的でありながらも無機質にはとどまらず、柔らかな印象すら私たちに与えてくれます。友禅染の伝統をふまえつつも独創的で表現豊かなデザインの作品は、多くの女性を美しく彩っています。
中田 一於
銀箔への挑戦を独自の技法として確立
伝統ある九谷焼に、これまで敬遠されていた銀箔を使って新風を巻き起こした陶芸作家、中田一於。銀色の美しさを作品に表現したい、という思いから、金箔ではなくあえて銀箔を使うことに挑戦。独自技法「釉裏銀彩」を確立させ、今もなお第一線で活躍を続けています。美しい植物などさまざまな文様に切られた銀箔は釉薬によって作品に閉じ込められ、その美しさはいつまでも私たちを楽しませてくれます。
般若 保
- おおよその価格帯
- ¥1,000,000 - 4,000,000
伝統技法から生み出される神秘的な模様
国内最高レベルの作品が集う日本伝統工芸展で、最高賞である日本工芸会総裁賞や文部大臣賞の受賞歴を誇る般若保。数種類の金属を交互に流し込む独自の技法「吹分(ふきわけ)」を巧みに使い、現代的かつ独創的な模様を作り出しています。黒と梨地色のコントラストが織りなす斬新なデザインは般若作品の真骨頂。モダンなたたずまいの作品は、奈良の薬師寺に奉納されているほか、国立近代美術館にも収蔵されています。
松原 伸生
- おおよその価格帯
- ¥500,000 - 1,000,000
江戸時代から続く伝統の藍染め
「長板中形」は名前の通り、長い板に中サイズの文様の型を用いて、布の表裏両面から藍染めする技法。そのルーツは江戸時代の浴衣にあると 言われています。この技法で人間国宝に認定された定吉を祖父に持つ松原伸生は、自らも19歳のころから染めの道へ。父と共に移住した自然豊かな君津の地で、現代に即した作品を制作し、三代目として活動中です。藍と白のコントラストが美しいその作品は数々の工芸賞を受賞し、2021年には芸術分野功労者に贈られる紫綬褒章も授与されています。
氣賀澤 雅人
- おおよその価格帯
- ¥700,000 - 1,600,000
200年前から続く技を現代に表現
200年ほど前に西欧から伝来して以来、江戸や薩摩で技術が受け継がれてきた切子ガラス。そんな江戸切子や薩摩切子の復刻にも携わり、カットガラスへの造詣が深い氣賀澤雅人は、時代にあった新たな可能性を常に探求してきました。厚みのあるガラス素材を深くカットすることで、ガラス特有の光の反射、映り込みをより魅力的に表現。数々の受賞歴を誇り、その作品は宮内庁にも買い上げられています。
望月 集
- おおよその価格帯
- ¥400,000 - 700,000
自然からの刺激を独創的な技法で表現
椿が代名詞の陶芸作家、望月集。東京藝術大学在学中に陶芸の虜となり、自然から着想したテーマで作品を作り続けています。2019年には、国内最高レベルの作品が集う日本伝統工芸展で最高賞(日本工芸会総裁賞)を受賞。自然界のモチーフを大胆にデザインしながらも、温度を変え何度も焼くことで微妙な質感の違いを繊細に表現した作品群は、国内外から高い評価と人気を得ています。
中村 信喬
伝統の博多人形に新しい風を送り込む
大学時代には彫刻(木彫)を専攻し、後に人形制作の世界に飛び込んだ中村信喬。数々の伝統工芸展で入選・受賞している、日本を代表する人形作家です。地元博多の伝統行事「博多祇園山笠」の人形なども手掛ける一方、新しい題材にも挑戦。博多人形に西洋的な風貌を施した天正遣欧少年使節シリーズの一部作品は、ローマ法王に謁見の際に献上されました。「人形の世界には必ずストーリーがある。ぜひ物語を感じて見てほしい」と語るように、彼の作品背景にある世界観に想像をかき立てられることは間違いないでしょう。
神農 巌
- おおよその価格帯
- ¥50,000 - 3,000,000
洗練を重ねる青磁に見る新たな可能性
神農巌が陶芸家を目指すきっかけとなったのは、中国青磁との出合いからでした。淡いけれど深い、透明感あふれる青さを自分でも作り出したいと、大学卒業後から本格的に陶芸を学び評価を獲得。作品は国内外の展覧会に出品され、各地の美術館にも多数収蔵されています。
琵琶湖の近くにアトリエを構え、水の動き、湖や空の青さといった自然から受けるインスピレーションを作品に反映しながら、生命の根源をテーマに制作しています。筆で塗れるほど緩く仕上げた磁土(泥漿 でいしょう)を塗り重ねる独自の手法“堆磁(ついじ)”で描かれた模様は、まるでDNAの螺旋のよう。造形美と装飾とが一体となった、神農ならではの美しいフォルムへと結実させます。
名倉 鳳山
- おおよその価格帯
- ¥800,000 以上
実用品を芸術品に押し上げた技術と伝統
硯(すずり)と聞いて、工芸品だと思う人は少ないかもしれません。しかし、その伝統的な実用道具に自身が学んだ造形技術を施し、芸術品へと高めたのが名倉鳳山です。中国の硯が評価を占める中、名倉の作品は日本の硯として初めて国に認められ、東京国立博物館に収蔵される快挙を成し遂げています。「墨をする道具」としての側面を保ちつつ、造形美も表現した「芸術品」へと硯のあり方を変えた名倉の功績は大きく、創造の進化はとどまるところを知りません。
杉浦 美智子
- おおよその価格帯
- ¥400,000 - 500,000
共感を呼ぶデフォルメの妙
現代の生活空間にも合うような、見た人がより共感を覚える作品を目指している杉浦美智子。「見たままの姿に誇張や簡略を加えつつも抽象化はせず、わかりやすいかたちに表現し直すことを常に模索しています。それが『人の形を人形にする』ということです」と語る彼女の作品は、動きのある姿態や親しみある表情が魅力です。柔和な質感を出すため、顔には和紙を選び抜いて使い分け、微妙なニュアンスを表現。趣味が高じて邁進することになったという人形制作ですが、各種の工芸賞を受賞し、めざましい活躍を見せています。
福島 善三
高い芸術性を生み出した「伝統への挑戦」
福島善三は、柳宗悦が「用の美の極地」と称えた「小石原焼」の人間国宝。国内最高レベルの作品が集う日本陶芸展で大賞を受賞、その評価は不動のものに見えますが、「同じ作風では評価されない」と新たな表現を常に追求するストイックな人物です。粘土作りから焼成まで全工程を手掛けるのも福島自身。小石原焼の窯元に生まれながらも挑戦を忘れず、伝統にとらわれることはありません。青みがかった乳白色仕上げの作品群は彼の代表作で、小石原焼の特徴である削り文様を施さないにも関わらず、その美しさから多くの賞賛を得ています。
土屋 順紀
- おおよその価格帯
- ¥1,000,000 - 5,000,000
植物染めと手織りがもたらす独創的な透明感
絶妙な色の濃淡や組み合わせで透明感のある作品を作り出す土屋。テキスタイルを学んでいた学生時代、植物由来の色の美しさに興味を持ち、草木染の世界に足を踏み入れました。土屋が主に手掛けるのは、透け感が特徴の織物「紋紗」。物語や絵画、自然などからモチーフを得て、自ら染め上げた糸を使って手織りしていきます。時間をかけて紡がれる作品はまるで蜻蛉の羽のよう。数々の伝統工芸賞を受賞したほか、芸術分野に功績を認められた人物に贈られる紫綬褒章も受章しています。
大谷 早人
- おおよその価格帯
- ¥250,000 - 5,000,000
江戸時代より続く技を現代に昇華
人間国宝であった師、太田儔をして「今後の香川漆器の代表的な人物になるだろう」と言わしめた大谷早人。高度な彫刻技術や繊細な色彩文様を得意とし、彼自身も人間国宝に認定されました。草花や昆虫など自然の一瞬の美を切り取ったデザインも多く、色の濃淡などを巧みに用いて表現。多数の受賞歴を誇り、芸術分野功労者に贈られる紫綬褒章も授与されています。現代アートの祭典、瀬戸内国際芸術祭では自身の生家を「漆の家」として公開。伝統的な漆の技法をアートの世界で表現し、国内外問わず好評を獲得しています。
前田 昭博
- おおよその価格帯
- ¥500,000 - 3,000,000
柔らかさと緊張感が並立するという魅力
陶芸の伝統を踏まえながら、独自な造形を追い求め、白磁の分野で人間国宝に認定された前田昭博。常に戦いを挑むように土に向かい、何の変哲もない白い土から感じ取った思いを、轆轤(ろくろ)を用いて具現化。そうして、凜とした佇まいを見せつつも柔和さをも兼ね備えている、前田ならではの作品が生み出されていくのです。彼の思いが一体となった作品は各所より高い評価を受け、国内のみならず、海外の多くの美術館にも収蔵されています。