蒔絵箱「暁紅」(ギョウコウ)は 、曙光に照らされた空と海を表現しました。
私の住む輪島市の隣町である能登町の海岸にて、早朝に見た暁の空と水平線のコントラストがとても美しく感じたことが今回の作品のモチーフのきっかけとなりました。
箱の上の面は 朝日に照らされた様々な紅い金色の雲、そして雲間から覗く太陽のシルエットを赤・桃色の螺鈿で表現しました。
箱側面については、上から朝日に薄赤く染まった空、その空に浮かぶ大小の筋雲、そして水平線のラインを白い螺鈿で表し、下へは朝日に照らされた海の輝きを金や螺鈿を使用し、奥から波間、大小の波で海を表現しています。
蓋を開けた状態・身の立ち上がりには千鳥や光琳波を基調に、デザイン化した天空の海をイメージして描いております。
作品鑑賞をして頂き、時に色々な感想を頂くことがあります。人それぞれ様々な捉え方や感じ方こそ健全でありがたいことだと思っております。作者としましては慈しんで頂ける方と想像の自由と余情を分かち合えることを楽しみにしております。
2017年 第64回 日本伝統工芸展 出品
分野 | 漆芸 |
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発表年 | 2017 |
サイズ | 高さ17.4 x 幅25.9 x 奥行14.4 cm |
材質 | 金、金と銅の合金、玉虫貝、白蝶貝、顔料 |
サイン | 箱、作品サイン有 |
備考 | 箱付き |
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乾漆
粘土で形を作り、その形を石こうで型にします。型に麻布を必要とする厚さに漆で貼り重ねて、型からはずして形を作ります。その後、さらに漆を塗って仕上げます。
麻の繊維は漆がしみこむと強くなるので、丈夫で自由な形を作るのに適しています。
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漆絵
色漆を使って絵を描く表現が漆絵です。最も古い時代に生まれた基本的な装飾表現です。
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蒔絵
蒔絵は日本独自に発達した漆芸の代表的な技法で1200年ほど前から行われています。器の表面に細い筆を使って漆で絵を描き、その漆が固まらないうちに上から金の粉を蒔きつけて模様をあらわします。
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平文
金や銀などの金属を、薄い板にのばしてからいろいろな形に切りぬいて模様をつける技法を平文と呼びます。
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螺鈿
螺鈿はアワビや夜光貝、白蝶貝などの貝がらの輝いた部分をうすくして使います。「螺」は巻き貝をさし、「鈿」にはかざるという意味があります。螺鈿は、1300年ほど前に中国大陸から伝わった技法で正倉院の宝物にも見ることができます。
鬼平 慶司 Keiji Onihira
蒔絵の技法は多岐にわたり 貴重な漆・金粉・螺鈿など さまざまの漆芸材料・技法を駆使して 創作表現をしています。 新しい漆・顔料などが開発されている近年、新しい技術を取り入れ 活かしてこそ 次の伝統に繋がるとの思いを強くしております。 工芸意匠を創作の基本に 作品の世界観や雰囲気を大切にして さまざまなモチーフやテーマを意欲的に制作していきたいと思っています。