蒔絵箱「去来」(キョライ)は、暮れゆく夕闇から雲海を照らす三日月の夜へ。一回りしての裏面は黎明へと場面が変わり 太陽に照らされた瑞雲の朝になります。
箱の蓋を開くと朱潤塗になっており 身の立ち上がりには朱鷺が飛翔して 空へと巡ります。
「去来」とは過去の記憶や思い出が甦ったり 思いが脳裏にかすめたり などの意味があります。夜 ひと時の休息から過去を見つめ、
朝 曙光を迎え 未来を見据える、日々当たり前の繰り返しこそが 幸せであり貴重なものだと感じて制作しております。
2013年 第60回 日本伝統工芸展出品
分野 | 漆芸 |
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発表年 | 2013 |
サイズ | 高さ13.7 x 幅29.5 x 奥行16.7 cm |
材質 | 金、白蝶貝、玉虫貝 |
サイン | 箱、作品サイン有 |
備考 | 箱付き |
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乾漆
粘土で形を作り、その形を石こうで型にします。型に麻布を必要とする厚さに漆で貼り重ねて、型からはずして形を作ります。その後、さらに漆を塗って仕上げます。
麻の繊維は漆がしみこむと強くなるので、丈夫で自由な形を作るのに適しています。
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蒔絵
蒔絵は日本独自に発達した漆芸の代表的な技法で1200年ほど前から行われています。器の表面に細い筆を使って漆で絵を描き、その漆が固まらないうちに上から金の粉を蒔きつけて模様をあらわします。
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螺鈿
螺鈿はアワビや夜光貝、白蝶貝などの貝がらの輝いた部分をうすくして使います。「螺」は巻き貝をさし、「鈿」にはかざるという意味があります。螺鈿は、1300年ほど前に中国大陸から伝わった技法で正倉院の宝物にも見ることができます。
鬼平 慶司 Keiji Onihira
蒔絵の技法は多岐にわたり 貴重な漆・金粉・螺鈿など さまざまの漆芸材料・技法を駆使して 創作表現をしています。 新しい漆・顔料などが開発されている近年、新しい技術を取り入れ 活かしてこそ 次の伝統に繋がるとの思いを強くしております。 工芸意匠を創作の基本に 作品の世界観や雰囲気を大切にして さまざまなモチーフやテーマを意欲的に制作していきたいと思っています。